第107問 湾に指す光

座る席は、東京湾に差し込む光がよく見える。 コンテナをやりとりするクレーンは、キリンと呼ばれるらしい。人工的な海岸線に沿って、大きさも様々なキリンが構えているのを眺める。 ふさぎ込むような朝の寒さを押しやって、熱視線のようなシャワーを浴びて…

第106問 山上は

ここ数週間は、自分にとってとても苦しい時間だった。 何をしていても頭の中が曇っていて、すべきことをしていないような、自分への深い罪悪感に苛まれていた。 弱さとも違う、自分の隙のようなものなのかもしれない。 ときたま、自分への自信を喪失してしま…

第105問 年の瀬が迫り

このブログも長いこと書いているが、最近は何も書きたいことが出てこない。 熱い気持ちも、昔を思う気持ちも、あまり湧き出てこない。 かしこまったこともあまり言うつもりもない。 この空間は、誰の評価も関係なく、自分の好きなことをただ書き連ねているだ…

第104問 大切な人間関係とは

家族にしても、恋人にしても、友達や親友にしても、大切な人間関係を基礎づけるものはなんだろうか。 血がつながっているという客観的事実か、金銭や精神的扶助という恩か、体を重ねる行為か、取り返しがつかないくらい過ぎてしまった時間か、毎度流れる楽し…

第103問 平穏を求めて

平和な時間、平穏な時間を求めて生きている。 今は、刺激はうんざりで、そういうものに憧れられるほど、自分はきれいでもない。正攻法で、誠実なものを求めている。素直な謝辞、真っ直ぐな言葉、真っ直ぐな態度。それ以外のものは飾りだ。 誰かの心は人生で…

第102問 忘れられないことについて

近頃の自分というのは、忘れるのを手伝うことに身を燃やしている。 忘れられない思い出というのは誰しにもある。 それが悲しい思い出であれば、自分の心を痛め続けてしまうものである。 一方で、楽しい思い出であると、それは過去に執着してしまう惨めな自分…

第101問 仲間の痛み

近頃の自分の周囲はというと、やっとのこと、自分が辛いことを辛いと皆が認めるようになってきて、お互いの痛みを分かち合うようなそんな時間がながれることが多くなった。 これは、私に心を多かれ少なかれ開いてくれている人がいることを感じて、自分の存在…

第100問 今の自分は

風が後ろから吹いて、自分のシャンプーの香りがした。好みのシトラスの香りだ。 その後、風は足元から立ち上がって、腕につけた香水が香った。 自分の街は帰るための街で、ずっとずっといるべき場所じゃないことを今日の帰り道に気づいた。 宇佐美りんの「推…

第99問 もう二度と

他人を傷つけようとして言葉を使っているのに気づく時、それがしかも心を許した人であった時、今までのすべてにはなんの意味があったのだろうか。 人を傷つけようと思って傷つける人は、自分が誰かにそうされたから、人を傷つけるのだろうか。 誰かがそうし…

第98問 とある年の暮れに

ふと君のことを思う。 帰りの電車で僕を見つめた君の瞳のことを思う。 君を慰めたときの君の流した涙を思う。 君を愛でたときの君の緩んだ唇を思う。 君と一緒にいると、自分の気持ちに気づく。 君と一緒にいられないときに、不意に高まった自分の思いが落ち…

第97問 2020年11月の文章

20201106 国内外の政治と遵法的正義 アメリカ大統領戦から目が離せない日々が続きます。特定のイデオロギーの勝利のために「不正」かどうかが争われる奇妙な出来事が乱発していて、言いがかりをつければ事実は捻じ曲げることが出来てしまうのではないかとさ…

第96問 2020年10月の文章

遠野遥『破局』 主人公は慶應法学部の3年生。曖昧ななにかが素直に現れていて、古臭いスノビズムとかエリート主義との距離感のとり方が今の慶應生っぽい。主人公は、腹の奥そこで隠し持ってる自負心と、社交的であろうとする適応化欲求が脳の多くを占めてい…

第95問 難題

難しい話。 どれだけ自分として素直なつもりでも、他の人間からみればまるで嘘のようにみえるのはなぜだろう。 嘘をついていないときに、嘘をついていないと証明するのはどれほどむずかしいのだろう。 昔々、貼り付けにされたり、正座している足に石をのっけ…

第94問 海流

漁をするときというのは、一つの船だけを出す時もあれば、仲間内で複数の船を出したりすることもある。 もしくは沖に出てみたら漁場に船がいて、お互い見つめ合いながら漁をするなんてこともあるかもしれない。 君は漁場で出会った船だった。 同じ港から出て…

第93問 浴槽がいっぱいになるまで

生活や暮らしの中で、波に飲まれ、塩に揉まれ、溺れるように進む。 一時の集まりで、君の姿を追う。 新しいめがねを買うとき、まじまじと見つめる自分の顔。 自分の望む幸せの形はなんなのかと思いを馳せる。 この思いが重なるその瞬間をずっと探している。 …

第92問 2020年9月のお気に入りの文章

20200901 遠藤周作『深い河』について 遠藤周作の「深い河」を半日で読み終えた。三島の豊饒の海を思い出さずにはいられない作品だった。あとがきにもあるが、遠藤もまた三島と同じく、己の人格を登場人物に分け与えるように、複数の登場人物とガンジス川と…

第91問 2020年8月のお気に入りの文章

20200803 miyearnzzlabo.com 昔、当然僕が子供の頃もなかったし。子供の頃って留守電もないですからね。なかったですし、ネットもちろんなかった。その頃、どんな風に人とコミュニケーションしてたり、どんな風に人と対峙してたのかな?って思うと、やっぱり…

第90問 2020年7月のお気に入りの自文拙文

20200701 小袋斉彬について MUSIC HUB | J-WAVE | 2020/06/26/金 | 25:30-26:00 http://radiko.jp/share/?t=20200627013000&sid=FMJ小袋成彬のラジオは先週で一区切り。このラジオ内で言っている「メディアになりたくない」って話、大切なことだと感じた。Tw…

第89問 time

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第88問 昔の香り

七月に祖父の一周忌を終えた。 こじんまりとしていた。去年の今頃に、ヘルマン・ヘッセの『知と愛』を必死に読んでいたのを思い出す。同じぐらい湿っぽい夜に、同じような布団に寝ていた。 三十三回忌を経ると、人は輪廻転生が叶うらしい。今から三十ニ年後…

第87問 ボート

昨日見た夢のこと やっと会いたい人に会えていた抱きしめて、その髪を掻き上げたんだ劇場の観客席のような場所で、ひと目も知らず抱きしめあった 場面は飛んで、いつか約束した海に来ていた俺の見知らぬ洞穴を、夕焼けを過ぎて宵の中訪れていた洞穴の中の壁…

第86問 時間が流れる

近頃は時間が流れるのを待ってほしいと思う瞬間と、さっさと過ぎ去ってほしいと思う瞬間で、まだらに時間への思いが心を埋めている。 今日の昼は本当にいい天気だった。聴く音楽全てが美しい音楽に思えて、生きているのが素晴らしいようなそんな気持ちになる…

第85問 2020年6月のお気に入りの自文拙文

自分が最近友達にあてて書いたお気に入りの文章。 1. ルッキズムと私達 個人的な意見だけど、見た目の美しさは人間の内面の美しさと結びつく時こそがその価値を最も発揮するわけであって、心が腐った外面の美しさは悲しいかな、心の汚さを煌々と照らし出して…

第84問 優しさは連鎖して

週に一回する電話は今日はなかった。 朝からずっと泣き続けていた自分としては、今日一日は一人の時間にしたかったから、それでよかった。物思いにふけりたかった。 その友達も今夜は、誰かのそばでその人の涙を拭いているらしい。 優しさは伝播して広がって…

第83問 幸せなのを確かめて

一 君が俺を呼んだけど 幸せだって言われたら、自分の幸せに気づくしかないじゃないか 自分がどれほど幸せか知ったら、君が幸せなことが嬉しいだけじゃないか でもどうしてこんなに悲しいの 一緒にいるのにね 俺は人を幸せにしたいんだ そのために生きてる …

第82問 憎しみはない

少し前に友達と電話で話した時に、その子の友達もまたとある試験にむけて勉強を頑張っているという話を聴いた。どうやらその友達は家庭環境に難があって、そういう逆境を憎しみの力で跳ね飛ばしてきたんだそうだ。 その子から見て、私がどのように見えている…

第81問 仕方なく一人だから

ここのところ、朝の早い時間に不思議と目が覚める。日差しが部屋に差してくるのと同じぐらいの時間に体が起きる。起きたときの体の調子は様々で、いいときもあれば疲れているときもある。そういう最近の習慣に多かれ少なかれ精神的に満足している自分がいる。…

第80問 Selfish&Unselfish

自分の親友のブログを読んで、なんだか自分は軽薄な人間になったような気がして、自然となにかを書きたくなった。 それは自分が軽薄ではないはずだという意地なのか、はたまた恐怖感から出る自分の確認作業なのか。わからないが、自分の泉から溢れ出るこの何…

第79問 我々と現実

一人間として、昨今の日本社会でおこっていることはなんだろうと考えてみると、それは現実的なものや目に見えるものへの偏った趣向、すなわち現実偏重の様相である。 ひとびとは働く上では、金銭的なものや人々からの評価といったような、自分による主体的な…

第78問 久保田利伸インタビューの備忘録

久保田利伸 デビュー30周年を迎えて思う、音楽と表現のこだわり https://spice.eplus.jp/articles/89332/amp ――日本の音楽シーンはいい意味でも悪い意味でも“流行”に敏感で、みんな右へ倣え的な動きをしていく中で、久保田さんはこれまでそういう動きとは全…