第18問 マジック

ネット上の声、という言葉が最近流行っている。SNSが浸透する中で、SNSや掲示板のコメントがだんだんと力を持つようになっている。匿名であることはもはや意見を弱体化させるものではなくなっているのだろうか。匿名とは怖いもので、その存在自体が我々に結果の平等を押し付ける。どんな身分性別で、何をしている人なのかまったわからない人物のコメントが、脚光を浴びて「声」へと変貌する。私はこの薄暗い雲の中での言葉の変換に気持ち悪さを感じることを禁じえない。

しかしこれよりも恐ろしい事実がある。それは「ネット上の」という言葉である。あたかも同様の意見が多数あるようである。しかし精査すれば、それはあくまで一つのコメントの切り抜きであり、ムーブメントにはなりえないなんてことはざらである。今のメディアはこの二つの要素に寄りかかりすぎている。中立を求めるならばこそ、こうした飛躍は最も避けなければならないことの一つである。メディア全体系に対する信頼感はメディア全てに統一される規律になくてはならない。メディアが多様化する中、その芯を脆くするようなものが許されているというのは、メディアを享受する一人の個人として受け入れがたいことである。