第73問 悲しき病

なぜ僕らはここにいるんだろうか。

白いシーツに枝垂れる黒い髪は、いつのまにか伸びていて、美しさは引き立っている。

白く汗ばんだ肌は、なまじか生々しく現実感を漂わす。

抱きしめることさえ苦しいし、悲しくて、寂しくて、人肌の温もりなんてものは夢だった。

自分が悪かった。

見せてはいけない世界を見せて、いざなった。男ととして隠さなきゃいけないものを見せた俺が、君の美しさを壊した。

背中に涙が流れた。

 

今最近ふと思い出す、苦しみではもうないけれど、瞑った目をよぎる。

本当は最初からそういう目だったのかもしれない、僕を見る目はなんら変わっていなかったし、その目に籠る意味に気づいていなかっただけかもしれない。

その瞳にはどんな意味があるの。昔の君に聞くよ。

 

「俺らは一体どういう関係なの」

僕には口にできない言葉だった。浅はかすぎた。僕が使うには安すぎた。

人間とは難しい。

好きだったけど、愛していたわけじゃないんだ。

 

あの好きだった頃に戻りたい。また会いたい。それだけなんだ。

 

女に求められる度に思い出す。

あのセックスがもっと美しければ。