第93問 浴槽がいっぱいになるまで

生活や暮らしの中で、波に飲まれ、塩に揉まれ、溺れるように進む。

一時の集まりで、君の姿を追う。

新しいめがねを買うとき、まじまじと見つめる自分の顔。

自分の望む幸せの形はなんなのかと思いを馳せる。

この思いが重なるその瞬間をずっと探している。

寂しさは降り積もり、人のぬくもりで融ける。

俺の愛は乾燥しているのかな。

冷めゆく秋に、人々に愛情が届いていることを祈る。

 

熟成されるように、思いは深まっていく。

素直に生きることしか今はできない。

目が合って湧き上がる感情に嘘はない。

思いが伝わればいい。

 

日々美しくなるその姿に、俺の逞しさは追いついているのだろうか。

君に訪れる寂しさを、俺の言葉は温めているのだろうか。

愛や優しさを君に注ぐ。

君の浴槽の栓が塞がるまで、俺は温かいものを注ぎ続ける。

適当な人間にはできないことさ。

 

君を笑わせ、ときめかせ、流す涙を拭けるような、そんな男でいたい。