第15問 今日

今日という日を書き残そう。


写真を見るとなぜかいい日だったな、と思う。そんな日である。

経験にはなり得ない体験だったが、それがいいんだと思う。

人が多かった。視線が交差していた。視線の蜘蛛の巣を掻い潜るように歩いた。これが疲れる。スパイ映画の主人公ごとく、歩く。

人の名を呼んで、写真を撮った。特に語ることはなかった。語る必要がなかったのかもしれない。ただ顔が見たい人々の顔を見れてなにより安心した。

飯は全く胃に入らない。困ったものだ。目前には華やかなドレスと紅潮した顔が並んでいる。どうしたものか。話しかけてみる。僕から引いた補助線は円周の点すべてに結ばれ、不思議な扇を描いた。むむ。

ネクタイを見ると一安心。じっくり話したい相手は興奮して歩き回っている。かえってこちらは歩数が減ってしまう。

自分も視線を出してみる。縦横無尽に焼き尽くすレーザービームのごとく。つまらん。

ふと先生の顔を思い浮かべ、向かう。いや変わらない。安心である。大人の安定感というやつを満喫した。コーヒーを飲む約束。去る。

隣の顔にも挨拶。慰められた。困った困った。仕方ない、悲しそうな顔でもしてやろう。

疲れた。口からポロポロ溢れでる相変わらず空気が読めない。疲れるものは疲れるのである。仕方ない。

静かな部屋へ。少し話す。顔が一つだと本当に楽である。すこし元気が出る。また戻る。

友に会う。空を見る。くつろぐ。

記念を残したくなった。人を呼んで集めた。ああ疲れる。でもやりたかったからいいや。

宴はひとまず終わり。

外へ歩く。ずっと話したかった顔と話す。うんうん。話しやすい。心地よい。うんうん。あっという間に着いた。

靴を履き替え、ボールをずっと転がしていた。異性というやつは、こちらが目を向けてもはじめは返してくれない。待つ。やっとキャッチボールに成功。やっと楽しくなってきた。指が痛い。たわいもないことを喋る。ペラペラ自分でも不思議なぐらい喋る。自分は相変わらず隅に置けない。

針はいつの間にか1周半していた。お金を集めて。他愛もない会話。楽しい。すごく新鮮。 

さて飯。あらお別れの通告。仕方がない。残念。うーん残念。ネクタイを1本引っ張り、旨そうな飯屋へ。

ソファはフカフカ。美味い。ネクタイは色々と俺に教えてくれた。ああ自然と笑顔。こういうのが一番好きだ。説明がめんどくさい話をする。これは疲れる。でも特別に話してやる。どうやら分かってない。骨折り損。

美味い。話はなかなかに弾む。相手は中々友に恵まれていないようだ。

ようしもう一軒。

コーヒーとケーキをご馳走してもらった。いいやつだ。色々喋りすぎた。やや後悔。でもあいつのためなら。聞けば聞くほど寂しそうである。やつは俺は好きだし、いくらでも話は聞いてやろう。

いつの間にか眠い。踏ん張ってすこし話す。

もう帰ろう。

店を出る。寒い。

騒がしい街をネクタイ2本が踊る。手の甲の脈打つ音でダンス。

希望を分かち合う。さようなら。


一人の電車。携帯を弄った。

なんか寂しいなあ。

なんか楽しかったなあ。


こんな日だった。