どれだけ耳の中を好きな音楽でかき回そうが、どうしても蓋の隙間から入り込んでくるようである。
別に意識的に考えないようにしていても、寒さは無意識に刺さるようにやってくる。
冷たくなった指をこすると、長くなった爪が瞳に反射する。
ペットボトルの蓋をきつく締める。
溢れかえってしまうなにかがボトルのなかにあるのを感じる。あたたかいコーヒーを闇雲に飲んで、寒空を行き先も決めずに歩く。
どうしようもない終わりを迎えるのはもう嫌で、どうにか温かいものをカップに注ぎたい。
目尻には涙ではなく、笑みの後を残し。
つま先には伸びた爪でじゃなくて、歩き疲れた豆をのこして。
寒空には温かい気持ちで敵わなくちゃいけない。
日に日になんとなくじゃなくなっていくのを感じながら、手のひらが固くなっていくのを感じながら。
胸が脈打つ。
全てはあるがままで。