第136問 雰囲気だけ

デートをすっぽかされた次の日、違う大学院に通ってる子から試験後飲みに行こうと誘われた。

事務所でインターンが一緒になって、平岡塾という塾での恩師が一緒だった。

その子は豊島の人で気がよく合う。

自分は、あえて出身高校で言うなら、豊島と桜蔭の人と気が合うと思う。

懐が広いというか、偏見のない知性ある素敵な子が好きなのだと思う。かわいければもっと好きだ。

逆に我が強くて、自律している風だけど、実は自分を無条件に受け入れてほしい感じたっぷりの隠れシンデレラは一番不得手だ。僕はお父さんではない。

捨てる神あれば拾う神ありだなと、ありがたかった。

 

昨日は、後輩の女の子に誕生日を祝ってもらった。

お誕生日をお祝いしたいから、と連絡をくれたから、嬉しくて二つ返事でオッケーした。

最近新宿の方に引っ越して、家のそばにいい店があるから一緒に行きたいと言っていたと思う。

新大久保の人気らしい韓国料理のお店で、女の子ばかりだった。

3つか4つ年下の彼女は在らん限りの気遣いで、色々取り分けてくれたりした。

比較的普通よりの彼女は、僕に穏やかな時間をくれた。

 

トイレから帰ってきたなりこんなことを言われた。

「最近気になってる男性がいるんです」

なるほど、と思った。

「本当は3,4年付き合っている今の彼氏にときめいたことは一度もないんですよね」

ふむ。。。

その子の彼氏の話を何度か聞いたことがあるけれど、束縛が強くて情けない男だなとよく思っていた。

結局独りよがりで女を幸せにできない男なんだなと自分で勝手に答え合わせをしていた。

 

その子とはまた別だけど、僕の女友達は、よく粘着質の男に好かれることが多い。それぐらい好きでないとやっていけないというのもあるだろうけど、往々にして女側は「私は好きじゃない」ということが多い。

その構造まで含めてやっと楽しいのかもしれない。恋愛に踊らされておらず、ほどほどの見た目の男に溺愛されているという自分が好きなのだろう。

 

この子はどういうつもりなのだろうと思っていた。

僕の誕生日を祝いたいと言って、「好きな人がいるんです」はバカでも考えてしまうだろう。

20%ぐらいは別の誰かの話なのかもしれないと思って話を聞いていたけれど、自分のことなのか他人のことなのかはっきり分からない。

その子もおかしな子ではないから、もし俺ではないとしたら流石に物言いとして僕ではないということをはっきりと分かる話をしそうであるし。

80%ぐらいの確率でこの子は僕のことが気になっているのだろうなと思うことにした。

 

僕としては、先日開拓したミュージックバー巡りの続きがしたかったから、音楽の趣味が近い彼女を連れていい感じのバーにでも行こうと思った。

それでバーでもう少し話を聞くことにした。

まだ若い彼女はそういう経験だけで楽しそうだった。

世の男が年下を好む理由はこうなのだなと思う。自分のしてあげることで新鮮に楽しそうにしてくれる人はこっちが安心するのだ。

 

バーでの彼女はとても積極的だった。

たくさん体を触られた。

先輩の男が後輩の女の子の体を触るのはセクハラなのに、後輩の女が先輩の男の体を触るのはセクハラにならないのだろうかと、グレンリヴェットを飲みながら思っていた。

 

正直、その子は可愛い子だけど、寝る気はなかった。

僕を抱ける女は一握りだ。

気軽に一緒に寝れる男ではないの。

 

経験人数はデートした人数に比較すれば本当に本当に少ない。

経験人数は少ないほど離婚しづらくなるらしいから、僕はあまり離婚しないだろう。

 

「終電もうないんじゃないんですか」と聞く。

ここまで積極的に求められると感謝の気持ちが湧いてくるものだ。

さらっと歩いて駅まで向かった。

 

帰り道、彼女はわざとよっかかったり、腕に捕まったり、触り放題を楽しんでいた。

僕は僕で、自尊心を回復しながら、手を振って改札を通った。