第19問 空間

人間に未成熟さを感じる瞬間があった。人生は一生勉強だから、思うことをここに吐き出してやろう。大事な断りとして、これは予備校での話ではないので僕の浪活を不用意に案じることはない。

ここ暫く味わうことのなかった感覚だったが、空間を自分の占有物だと捉えて新たな訪問者を排外しようとする人間はいるのである。私はまさしくその一片を感じた。空間の主として自分が存在することを自負し、それを守ろうとする人間を確実に瞳に収めた。その人間は私より年上で、なおさら私の刃は鋭くその芯を切った。現れた断面は内実という言葉からは到底遠いものである。素直に次元の低さを感じた。学とか、そういう類ではなく人としての富の薄さとでも言えるような軽さを知覚したのである。同時に私は術の発見に苦しんだ。どうこの人間には対処すべきか、どう臨むことで自分は納得できるか。瞬間にして葛藤が巻き起こった。

初対面の人間を概念的に考えることはかなり粗雑だとは思いながらも、年上の人間に対して厳しい目を向けてきた人間として、強い違和感を感じてしまった。「人生そんなもん」と丸くまとめることは簡単だろうが、ここでグッと考えてみることにした。

自分の順応性が低いのか。期待が強すぎるのだろうか。おそらくどれも正だろう。といっても、空間の主を自認する人間に久しぶりに出会ったことが何より新鮮だった。あの人間は目が笑っていなかった。私が話すとき、どこを見てるか分からないような目で私の首あたりを見つめていた。

いい経験だった。この一言に尽きる。