第76問 愛の轍

一度抱いた感情というのは、時が経っても消えることはない。

愛惜という言葉はどうしてこの程までに真実味と美しさを持つのだろう。

切愛の限りを尽くして、生きる。

突然になんの脈略もなく再び出会ってしまうと、あけすけな自分が現れるようで気恥ずかしいけど、自分らしくて嫌じゃない。

何の気なく帰るいつもの道がちいさく華やかで、踏む足も少し優しくなる。

見たこと無いイヤリングはとても美しくて、自分が君の声を忘れていたことに気付かされた。

とても似合っていた。

 

「あなたは憧れと恋愛感情を混同しているのよ」なんて言うけれど、俺はまっぴらそう思わない。

君はきっと俺が君にあこがれているだけで、好きじゃないんじゃないの、なんて思っているんだろうけど、ちがうんだ。

人は女で有る前に、男で有る前に、人であるんだよ。

人であるからこそ、人として魅力的なことはとても大切なことなんだ。

やさしさやたくましさは、人間としての魅力であり、女としての魅力なんだ。

だからどれだけ怖くても、愛したい、って思えるんだ。

それがたとえフェイクかもしれなくても、俺はそれを信じている。

零れそうになった愛の堰は、再びその波を穏やかにして、そうやって歴史は紡がれていく。

送った歌を今は優しく聞いて...

 

純愛。

それを求める人によって、純愛は成し遂げられる。

諦めた人同士ではきっと不可能なことなんだ。

素敵なダンスを踊ろう。

いい歌を知っているんだ。