第119問 セカンドライフ

"Your Second Life Begins When You Realize You Only Have One"

という言葉がある。

自分の人生が一度きりだとはっきりと分かった時、2つの目の人生がはじめる、と日本語に訳せばなるだろう。

確かに、星野源も似たようなことを言っていた。

どうせ死ぬならという生き様になった、という話をいつぞやのラジオか何かで話していたように思う。

自分は'realize'という感じではないので、まだ1つ目の人生を生きているのかもしれない。

 

でも、こう思うようになって人生が少し変わったかもしれないと思うようになったことはある。

それは、自分が誰かからwith disrespectな扱いを受けてしまうときのことだ。

多分従前の自分は、自分がdeserve disrespectな存在なんだと感じてしまっていた。

自分にはなにか大切なものが欠けていて、だからこの人はそれを分かって、disrespectな振る舞いをするのだ、と。

しかし、ある時からこういう考え方を一切しなくなったように思う。

何がきっかけだったのだろう。ちゃんと思い出せない、なにか出来事があってこうなったというより、いろんなことの積み重ねではっきりと自覚するようになったのかもしれない。

たいてい自分の魅力がイシューなのではなくて、相手に人を大切にする能力が欠けている可能性が高いということを考えるようになったのだ。

 

一年ちょっと前の話。

僕はとある女の子のことがとても好きだった。本当にその女の子のことを友達全員に話してしまうぐらい、好きな女の子がいた。

大学の研究所のゼミで一緒になり、席が隣だった。話しかけて、連絡先を交換し、それから毎日のように一緒に勉強をした。

彼女からくるメッセージも電話も全てが愛おしかった。

何度も長電話して楽しい時間を過ごした。

ただ、彼女には忘れられない男性がいた。留学先で出会った人らしい。

ずっとその彼を忘れらないのだという話を聞いていた。

最初からその話を聞いていたから、恋心は沸かなかった。

でも、彼女が自分を見つめる瞳には恋愛の思いがこもっているのが分かっていた。

日を重ねていく中で、好きになっていってしまう自分がいて、彼女の自分への思いが深まっていくのも感じていた。

自分は過去にとらわれる彼女に今の幸せを感じてほしい、と思っていた。

自分と過ごす時間が彼女にとって幸せな時間になれば、と心から願っていた。

曖昧な関係となり、思いを伝えたけれど、彼女には関係を明確にすることを断られてしまった。

それから僕は距離を取ろうとして、でも行かないでと言われ、何度かやり直そうとしたけれど、結局はひどい終わり方をしてしまった。

 

今では苦い思い出になってしまった。

あの告白を断られた時、自分はすごく悲しかった。

自分に何が足らないのだろう、とふさぎ込んだのだった。

 

ただ、またいくつかの経験を重ねて思うのは、言葉や瞳や振る舞いに偽りはないということであるし、恋愛関係になるというのは一つ自分にとっても重いものなのだということだ。

帰り際に駅で抱きしめ合う時間、夜道でつないだ手のひら。

そういうものを経て、好き同士という関係を認められなかったのは、彼女だったということに気づいた。

そして、今までの恋愛の少なくないものが、そういう相手の不誠実さにやられてしまったのかもしれないとはっきりと分かった。それはある意味でrealizeなのかもしれない。

 

そう思うようになって以来、恋愛を気楽にとらえられるようになった自分がいる。

身軽になった自分を、誰かにとって魅力的に思ってもらえたら、それは本当に嬉しいことだなと思う。