第148問 懐かしさ

最近、朝に起きて家で勉強していると、とても懐かしい気持ちになった。

自分の部屋からした香りと窓から差し込む朝陽の眩しさと温かさで、僕は中学と高校時代をふと思い出した。

僕の中高時代は、ひたすらテニスに明け暮れる日々だった。

朝から晩までずっとテニスをしていた。

家が大変でそれから逃げるようにしていた部分もあるとは思うけれど、父親が病気で倒れる前ずっと前から僕はテニスにのめり込んでいた。

夏休みはもう学校がないから、朝からみんなで練習していた。

中学高校って3学期制だから、7月の前半にはもう1学期が終わって、夏休みが始まる。

あの朝練に行く日々の朝を思い出した。

毎日が楽しかったあの日々の朝。

 

なぜあの気持ちを思い出したのだろう。

ふと考えてみると、今の勉強の日々が僕にとってはとても楽しい日々になっているからだった。

たしかに、スポーツとこの勉強はとても似ていて、共に日々の着実な練習や努力がそのまま自分の力に変わり、毎日頑張っている自分の姿に自信を手に入れていく。

思い返すと、なんて美しい日々だったのだろうか、と思った。

テニスを通して僕は僕自身と必死に向き合っていた。

それはそのまま今の自分でもあるのだと気づいた。

自分自身に向き合うのは、何か手段が必要で、自分の考えていることについて自分を糾問しても、それは同じ自分が散らばっているような感じなのだ。

むしろ、自分の変化を望む自分と、変化をしていく自分がそれぞれ別に存在していて、自分が自分を変えていくようなそういう対面的な構造において、自分との対峙を感じる。

 

あの時の自分は毎日一生懸命テニスしている自分が大好きだったのを思い出した。

色々なことを感じて、心が一杯になりすぎて、いろんな人に傷つけられて、いろんな人を傷つけて、すっかり自分は自分を好きな気持ちを忘れていたことに気付かされた。

僕は、僕を勇気を持って信じて、毎日努力する自分が好きなんだ。

 

人生は無常で無情だが、そういう毎日を愛することのできる自分がそばにいてくれれば、きっと大丈夫かもと少し楽になった。

 

朝陽の差し込んだ僕の部屋の香り。

美しい自分を思い出した。

 

そんな朝だったから、好きな香水をふった。

この香水はとても評判がいい。

僕の肌に合っているのだろうか、いい香りだねとよく言われる。

もしかしたら、ただ僕のことが好きな人だから、本能的にそう香っているだけなのかもしれないけれど。

 

対比的な香りを感じ、まとい、

僕は自分の中でずっと変わらない美しいものと、生きてきて自分に増えた美しいものを、握りしめるように触感する。